高齢者に多い、頭位変換性めまい

頭位変換性めまい「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」

この状態は、特定の頭の位置変化により発生するめまいの一種です。この病気は、内耳に存在する半規管と呼ばれる構造が関与しており、通常は良性であり、特定の治療法によって改善することができます。

〇内耳の構造と機能

内耳は、音を感知する役割を持つ蝸牛と、平衡感覚を担当する前庭から構成されています。前庭はさらに、三つの半規管と二つの耳石器(うけんき)から成り立っています。半規管は、頭の回転を感知し、耳石器は直線的な加速や重力に反応します。BPPVは、これらの構造の一部において異常が生じることによって引き起こされます。

〇BPPVのメカニズム

BPPVは、主に内耳の耳石の問題に起因します。耳石器にある耳石(カルシウム炭酸塩の結晶)が、通常は安静にしている際に、半規管内に移動することがあります。この耳石が半規管内での位置を変えることで、目の動きや体の位置との関係が狂い、めまいを引き起こします。このめまいは、特定の角度(例えば、床に座っている状態から急に立ち上がる、寝返りを打つなど)を取るときに症状が表れます。

〇症状

BPPVの主な症状には、以下のようなものがあります:

1. 回転性めまい: 特定の頭の位置をとった際に、回転するような感覚を伴うめまいが生じます。
2. 持続時間: 一般的には数秒から数十秒間持続しますが、長い場合でも数分以内です。
3. 誘因: 頭の位置を急に変える(寝返りを打つ、床から立ち上がるなど)ことで、症状が引き起こされます。
4. 吐き気やバランスの喪失: 基本的に良性ですが、めまいの症状が強い場合には吐き気やふらつきも経験することがあります。

〇診断

BPPVの診断は、医歴の確認と身体検査に基づいて行われます。また、特定のテスト(例えば、ディクスホールパイクテスト)を用いて、めまいの原因がBPPVであるかどうかを確認することができます。このテストでは、患者の頭を特定の方向に傾けることで、めまいの症状を誘発します。

〇治療

エプリー法

1. 頭の回転: めまいを感じる側の耳を床に向けた状態で仰向けになります。このとき、頭は45度程度その側に回します。

2. 位置の固定: その状態で約30秒間待ち、めまいが収まるのを待ちます。

3. 頭の動かし方: 次に、頭を90度反対側に回し、患者の顔が上を向く位置にします。この状態も同様に約30秒待ちます。

4. 体の回転: さらに、体をそのまま回転させ、患者が横向きの状態になります。このとき、頭はさらに90度下げる形になります。

5. 起き上がる: 最後に、患者はゆっくりと座る姿勢に戻ります。

これらの動作を行うことで、耳石が内耳の正しい位置に戻ることを目的としています。

効果と注意点

エプリー法は多くの場合、数回で効果が見られますが、個人によって差があります。エプリー法はめまいが一時的に悪化することもあるため、無理をせず、徐々に日常生活に戻すことが推奨されます。また、エプリー法は全ての方に適しているわけではないため、必ず専門の指導のもとで行うことが重要です。

〇ブラントダロフ法(Brent-Daroff法)

1. 初期姿勢: 患者は仰向けに寝転がります。
2. 頭の回転: 特定の方向に頭を回転させます。
3. 首の位置変更: 頭を保持したまま、体を一方の側に傾ける。
4. 元の位置に戻す: 最後に元の仰向けの位置に戻します。

〇効果
この運動療法は、内耳にある平衡感覚を司る器官に働きかけ、めまいの原因となっている耳石の位置を改善することに寄与します。

〇注意点
すべての方に適しているわけではないため、事前に専門家に評価を受けることが重要です。

ブラントダロフ法は比較的易しく実施できるため、患者自身が行う場合もありますが、適切な指導を受けることが要されます。

〇予防と生活改善

BPPVの再発を防ぐための生活改善

1. 動作の際に注意する: 頭を急に動かさない、特に寝返りや立ち上がりの際はゆっくり行動すること。
2. 環境を整える: 暗い場所や不安定な場所では注意を払い、転倒を防ぐために周囲を整理すること。
3. 定期的な運動: バランスや筋力を向上させるために、定期的な運動を取り入れることが効果的です。

頭位変換性めまい症(BPPV)は、特定の頭の位置変化によって引き起こされる良性のめまいです。内耳の耳石が関与しており、特定の治療法によって効果的です。もしもBPPVの症状があれば、早期に専門医を受診し、適切な評価を受けることが重要です。正しい診断と治療を行うことで、生活の質を大きく改善することができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です